平成30年11月7日実施
当社で伐採をさせていただいている東村山市の神社の氏子総代の方々より、台風の影響で社務所と本殿の間にある目通り430cmのケヤキが動いてしまったので見てほしいとの連絡がありました。
9月30日から10月1日に通過した台風24号の暴風により、以前より傾いていたものが根回りの破断よりさらに傾いてしまっていました。
ケヤキはかなりの昔に北側へ伸びていた二又から上の太枝が落雷を受けて消失し、その影響で北側の樹皮が剥がれて形成層も消失して根回りが腐っていました。
さらには折損部から腐り始めて現在では樹幹内部が空洞化しており、元々南側へ傾いて生長していたものが北側の太枝が消失したことで南側に重心が偏り、本来支えるのに重要な北側の根も腐っていた状態でした。
以前から伐採を検討していたそうですが、御神木クラスのためになかなか伐採に踏み切れず、当社でも普通の台風では倒れないので伐採の必要は無いと伝えていました。
歴代3番目の想定外の暴風には耐えきれず、今回は倒れなかったものの総代さん曰く北側の幹が敷石から10cmくらい上がってしまっているとのことでした。
傾きが大きくなってしまったこと、今後の台風等の大風に耐える保障がないこと、万が一倒れた際は建物に大きな損害が見込まれることがら苦渋の選択で伐採することになりました。
南側の太枝を伐採して根元から高さ5m程度で元木のみを残すという案も上がりましたが、推定樹齢400年の老木には酷なことで枯れてしまう可能性の方が高いため、当社からは勧めることができませんでした。
お呼びいただいて訪問した際に、実際に木に登って折損部から元木の空洞内部を確認し、南側の太枝も調査したところほぼ空洞であることが打音検査で判明しました。
老木のため玉杢が多数みられ、空洞でも杢の出現する部分で板が採れるくらいの肉厚があれば多少の価値をみることができるため、材の買取可否は伐採してからの判断としました。
調査の結果から予想通りの空洞である場合、伐採はミニラフターでも可能な重量でしたが肉厚な場合も想定し、現場内に大型クレーンが養生無しで進入できるため25tクレーンを手配しました。
伐採前に当神社管理の宮司さんの下でお祓いを行うとのことで、朝より氏子総代の方々をはじめ関係者の方々20人以上のお立会いがあり、皆様でケヤキの最期を見送られました。
1日で伐採搬出作業を終わらせるべく、当社ではユンボとクレーンの他に伐採材等運搬車両3台と機材等運搬車両3台の計6台でお伺いしました。
8時よりお祓いの神事が執り行われ、終了したのち当社独自のケヤキへのお清めを行って作業を開始しました。
まずは細枝を取り除いて幹と太枝を丸太状にするために、萌芽枝を吊り伐りしました。幹表面は老木特有の大きなコブや杢花の塊があるため、枝切り時の足場を確保するのが容易でした。
順調に作業が進んで10時までには全ての枝を取り払って丸太状の幹になり、午前中には南側の太枝の胴切を行って元木のみの状態にしました。
太枝と言えどもほぼ幹という状態でかなりの太さがあって、胴切時には90cmバーのチェーンソーで周らずにちょうどの太さがありました。
この太枝は以前の強剪定の影響で上方からの腐りが進行して下方からの腐りともぶつかり、内部が完全に貫通した空洞となって非常に太いものの重量は2.3t程しかありませんでした。
胴切した時点で元木の幹内部の状況が完全にわかるようになり、幹は木の太さに対して少ない肉と皮で立っていたことが判明しました。
午後より残りの元木の伐採を開始し、玉掛位置がコブ等で肥大しており、5mのワイヤを巻くことが非常に大変で目通りよりも太い状態でした。
元伐りを行った際、40cmバーの小型チェーンソーで回しても伐れるくらいに幹は肉薄な状態で、1箇所で石が巻き込んでいて刃を潰す事態になってしまったものの他は問題なく吊り倒しました。
元木も完全な空洞なため重量は4tを下回っており、伐採したままの状態でトラックへ積込んで、コブ等は老木の証となるため今回は敢えて伐り落とさないようにしました。
巨木のため元木1本で容積的に満載となり、残りの伐採材は他のトラックへ積込み、枝葉もダンプ1台で軽々積み切って1日で全作業を終了しました。
伐採材は腐食が酷く肉薄で厚い板を採るための余地がほぼ無かったため、材は買取することができず社木の玉杢材にも関わらず引取での対応とさせていただきました。
後日、本記事に掲載し切れなかった別角度からの写真を追加掲載します。